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こそあどまちっく

 ←10年目に向けて →暑中お見舞い申し上げます。
夜。
閉店時間を過ぎてからご来店されたお客様を見送った後、
急いで店を閉め、地下鉄に乗った。
向かった先は、以前住んでいた街。
特に行きたい理由があった訳でもない。
強いて言うならば、『あの』街の雰囲気に包まれたかったのかも知れない。

週明けとは言え、夏休み真っ直中。
おそらくいつも以上に多くの若者達で賑わいを見せる『その』街を、
文字通り人ごみを縫う様に、ただ宛も無くぶらぶらと歩き、
途中立ち寄った古本屋で気になった本を数冊購入し、
帰り際、ふと思い出したとある喫茶店の、
それは欅であろう扉の取っ手を少し強く押して入った。

『カラカラン』
低いドアベルの音が心地良く店内に響く。

漆黒の太い柱と梁。
凹凸のある木の風合いを処理せずそのまま活かした床板。
落ち着いた空間を演出する白熱灯のほのかな明り。
耳に優しいクラシックの音色。
隣を気にせずゆったりと座れる座席の配置。
使い込まれて味わい深いアノニマスデザインのテーブルや椅子。

そうそう、これだ。
街の様相は変わっても、ここはあの頃の侭。

多くの居酒屋、風俗店が軒を連ねる商店街にひっそりと佇むファサード。
いつからこの街のこの場所にあるのかは定かでないが、
昔から変わらないままであろう静謐な空間が、間違いなくそこにはある。

贅沢にも、4人掛けの丸テーブルにひとり座り、
運ばれて来た琥珀色の中煎りブレンドを啜りながら、
買ったばかりの古本の頁を捲り、綴られた言葉を目で追いかける。
ふと視線を移すと、
目の前の出窓から垣間見える『この』街の断片と、
忙しなく行き交う人々の姿を網膜に捉え、
『この前を通る人達の中で、この空間を体験したことのある人はどれくらいいるだろうか』
というようなことを自分の店と重ね合わせて考えている自分自身に問う。

果たして、自分は本当に珈琲が飲みたかったのか。
あるいは、歩き疲れてただ休みたかっただけなのか。
それとも、魅力的な空間に身を寄せ、浸りたかったのか。
はたまた、この店に招かれるべくして、ここに居るのか。

閉店時間を前に、その答えは判らぬまま、
舌に残る上品な後味を何度も確認しながら、
自分を包み込んでくれたその空間と、その店と、
そしてこれから更に多くの人を受け入れるであろうその街に別れを告げ、
駅へと向かった。


いつもより少し足早だったのは、きっと、
『どの』街よりも今住んでいる『この』街が好きだからなのだと思う。





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